評論家

2013年3月 1日 (金)

第204:人間はなぜ歯を磨くか

石川純著、「人間はなぜ歯を磨くか」(医歯薬出版、昭和61年3月20日)を紹介します。
石川純:
http://wpedia.goo.ne.jp/wiki/%E7%9F%B3%E5%B7%9D%E7%B4%94

自伝的にエピソードを追いつつ歯ブラシの必要性を説いた好著。
著者は、歯科医師となり、医師ともなり、更にアメリカで歯科を学び、東京医科歯科大学、北海道大学で活躍した。
今から50年以上昔、アメリカでは既に歯ブラシで歯周病が治っていたという。(日本では未だに「歯周病を治せばノーベル賞物だ」などと言う専門家もいるくらい遅れているのが現実。)
帰国して、歯ブラシに関する、動物実験、臨床実験等を繰り返し、一貫してブラッシングの重要性を主張し続けた。
著者の誠実さは、初めての患者の接し方、分かりやすい説明の例示、など随所に見られ好感を持った。

一般読者向けの部分と専門家向けの部分とが混在するが、専門家向けの部分も丁寧に読めば一般の読者も理解できる。
私は、「歯周病が治る歯ブラシ法」の執筆に当たってこの本は見落としていたが、歯周病と歯ブラシの関係についての見解はほぼ一致している。歯ブラシ道場長お勧めの本としたい。

これだけ明快に歯ブラシの重要性を説いた主張が既に絶版となっていることに驚く。
著者が執筆時点(30年前)に提起した問題点が未だに何も解決していないことに更に驚く。
歯ブラシの効果を認めない人によって抹殺されたのかとも疑ってしまう。
もっと読まれるべき本。医歯薬出版には再出版をお願いしたい。
当面、図書館で捜すのが早道か。

特にわが意を得た印象的な記事は、
●ニホンザルの食物
の4割は葉、2割は果実。スイカを与えると真っ先に種を食べる。歯垢が付着する条件がない。調査により、野生のサルの口の中は極めて清潔なことを実証。

●人類は、火や石器を手に入れ食物を加工して
栄養吸収効率が向上した反面、歯が小さくなった。禁断の木の実はやはり知恵だった。

●砂糖を多く食べる害悪について詳述している。
離乳の時期にセロリやにんじんを我が子に与え、偏食なく健康に育った事実が書かれている。
偏食のある子供は離乳の失敗だと断言する。世の母親要注意。

●歯垢(プラーク)とは、
歯に付着した口腔常在菌とその排泄物のかたまり、食べ物のカスのことではない。
時間が経つと唾液中のカルシュウムを取り込んで固い歯石となる。うがいくらいで除去出来るものではない。
顕微鏡を発明したレーベンフックが歯垢中の細菌を確かめたとされる。

●歯磨き行為の目的は、
①歯垢の除去、②歯肉のマッサージ強化。
自然界の他の動物の行動にも見られる身の清潔を保つひとつの手段と考える。

●歯磨き剤や洗口剤は、
広告や流行に惑わされず節度を持って使用せよ、と主張。万能ではないことを強調。

●フッ素の再石灰化効果と重曹の洗浄効果効用も述べている。

●最終の8,9,10章は、
①様々なブラッシング法の紹介と、それぞれの利害や使い分け、
②歯ブラシと補助器具の紹介と使用法、
③ブラッシングの効果の実証、
④歯ブラシ指導上の留意点等、いずれも用語等やや難解で、専門家向けの記事。

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2008年10月28日 (火)

第76:セルフケアから始まるお口の健康(2)

(続き)
東京都歯科医師会付属衛生士専門学校の石井実和子先生が歯ブラシの実習をやってくれた。先生と助手、それに20人もの衛生士の卵たちが分かり易く教えてくれた。全員白衣にナース帽、ピンクのエプロンを着用していたのが華やかだった。会場のお父さんやお爺さん達もこの時は目を覚ましたようだった。
実習そのものは、日に1回磨きさえすれば、くらいに思っている人には有益だろうと思う。「もっと丁寧に磨かねば」と思ったに違いない。何はとまれ、歯ブラシを持ち、歯に当てなければ何も始まらない。入れ歯の磨き方との磨き方も多くの人に参考になったと思う。
しかし、歯ブラシの達人には物足らないものだった。私も歯ブラシ講習会をやるが、この日の実習はほとんど参考にはならない。歯の表面の汚れを磨いて落とすという説明はとも角、歯周ポケットの清掃には何の言及もなかった。20分程度のシンプルな実習だったので無理もないが、これを聞いた人たちの歯ブラシが明日から格段に良くなるとは思えない。自慢じゃないが「歯周病が治る歯ブラシ法」では、歯ブラシの目的から説明を始めている。

しかし、最近このような市民のための講座が盛んだが、大変結構なことだ。8020運動の地道な一環だと思うと頭が下がる思いだ。有難うございました。

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第75:セルフケアから始まるお口の健康(1)

10月21日、新宿紀伊國屋ホール において、日本歯科医師会とサンケイリビング新聞社の主催で、一般市民向けの講座「セルフケアから始まるお口の健康」が開催された。
後援団体として、厚生労働省、日本医師会、東京都歯科医師会、8020推進財団、日本歯科医学会、日本口腔衛生学会、日本学校歯科医会、日本歯科衛生士会、協賛団体として明治製菓の名前が上がっていた。
定員の400名はほぼ満席。9割が女性、(ほとんどが主婦だろう)。この私が女性に声をかけられたほど男性は珍しい存在だった。「熱心なんですねえ」「ええ、まあ」といった具合。(ドキドキ)

長崎大学の飯島洋一先生がフッ素の話、東京都歯科医師会付属衛生士専門学校の石井実和子先生が歯ブラシの実習をやってくれた。
フッ素の力で歯を守る。と題された40分間は、私にとって中身の充実した良い話だった。フッ素については、生半可な知識を持っている私だが、専門家に知識を注入されて、理解を深めることができた。その理解の範囲で飯島先生の話を要約する。
1、物を食べて口の中に糖が残っている間、歯は糖で融けるが、これを脱灰(だっかい)という。しばらくして糖がなくなると、唾液中のカルシウムが歯に戻るが、これを再石灰化という。口の中では一日中これが繰り返される。
2、フッ素とは自然界に存在するフッ素化合物のことである。フッ素の働きは2つ。1つは、フッ素はカルシウムと結びつきが良いので、再石灰化を助ける。もう1つは、フッ素はイオンの形で歯の表面に付着して歯を水素イオンから防護する。
3、フッ素は、歯科医は使用するが、個人でもある程度使用できる。フッ素入り歯磨き剤を使う、緑茶を飲む、或いは、明治製菓の、緑茶フッ素配合ガムを20分間噛む、などにより、日常のセルフエアでフッ素を活用することが出来る。
4、フッ素の効果はエナメル質ばかりでなく、象牙質(露出した歯根)にも有効なので、歯周病にも良い。

以上のようなことを理解した。緑茶の具体的な利用法については私も別に考えてみたい。
引き続いての、歯ブラシ実習については次回に報告する。

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2008年9月26日 (金)

第65:「オーラルヘルスと全身の健康」

P&G株式会社が発行した「オーラルヘルスと全身の健康」という小冊子を読んだ。医学論文ではないが、最新の医学的なことを判りやすく、美しい図を使って解説してくれている。勉強になった。
歯周病菌には何種類かあり、いずれも嫌気性菌だということはこのブログの記事、「第2:歯周病菌」にも書いた。この冊子では、何種類かある歯周病菌は協同すると書いてあるのだ。種類の違う菌が協同してより良い環境を作るばかりでなく、協同して人間を攻撃するというのだ。学問的なことは知らない私には驚きだ。協同するのだ。人間と猿は協同しない。菌のほうが人間より賢い?「歯周病が治る歯ブラシ法」の中で私は、歯周病菌は単細胞なので撲滅するのは難しくないなどと、彼らを侮った記述をしてしまったが、とりあえずこの場で撤回しておく。
生物の共生というのがあるが、その一種だろうか。異なる種類の生物が助け合うのだ。それにしても、歯周病菌は細菌の筈だが、と考えてしまう。知らないところで不思議なことが起こっている。

この冊子は人から借りて読んだのだが、自分のが欲しかったので、P&Gの日本本社に手紙を書いて、1冊お願いした。定価は書いていないが、ただでは悪いかなと思って「歯周病が治る歯ブラシ法」を1冊同封した。1ヶ月以上経つが今のところ鹿外(しかと)されている。外資は合理的だ。金にならないところには目もくれない、のだろう。いっそのことアメリカ本社に、英語版でもよいから下さいといってみよう。意外と送ってくれるかもしれない。

「歯周病が治る歯ブラシ法」すぴか書房(tel-fax048-464-8336)
http://www.spica-op.jp

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2008年9月23日 (火)

第64:日経健康セミナー21

9月20日、東京青山で、日経新聞が主催した市民向けセミナーを聴くことができた。題して「健康は財布を救う、医療費とお口の健康」。500名のホールはほぼ満席。男女はほぼ同数。しかし男性は圧倒的に高齢者が多いのに対して、女性は各年齢層にわたっているようだった。
基調講演では歯を患った場合の費用を細かく分析してくれた。歯科の診療費、合併症が出た場合の医療費、通院や日常のケアの費用、更には収入の減もあると。積もり積もると驚くほどの金額となる。続くパネル討論では、専門医の具体的なな解説、或いはパネリストの先生方の実践的な知識など聴くことができた。早速歯磨きを、と思っているとサンスター提供の歯ブラシセットをお土産にくれた。入場無料、有意義な2時間だった。以下思わずメモした知識。
a 口の中が汚れていると誤嚥した場合肺炎になりやすい、肺炎は65歳以上の死因の3位。
b 歯周ポケットとは身体の内と外の境目、細菌が付きやすいところ。
c 口元の表情は大切、歯が抜けると見た目、かなり老ける。
d 皿とコップでは洗い方が違う、歯周ポケットの形は千差万別。場所に応じて考える。
e 歯が抜けると歯科医療費は減るが他の医療費が増える傾向にある、歯周病の合併症を裏付ける。
f  反対側が抜けて、噛み合わせのない歯は汚れやすいし歯周病になりやすい。
g 噛み方の少ない人は肥満が多い。肥満の人は歯周病になりやすい。
h 歯周病は立派な生活習慣病。
歯周病の3S。サイレント(自覚症状が少ない)、ソーシャル(社会的・誰でも罹る)、セルフケア(自分で予防できる)。
j  口の中の細菌300種以上、数千億個以上。誰の口の中にも歯周病菌はいる。歯周病は親からうつるというのは本当か?
k やはり1日3回と言っていたが本当か?回数よりも質と思うのだが。

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2008年9月14日 (日)

第62:津波の予防

失敗学のすすめ』という本を書いて、失敗学を提唱している、畑村 洋太郎先生の講演を聴く機会があった。この中で、明治29年の三陸大津波の事例が紹介された。三陸沖を震源とする巨大地震によって、リアス式海岸を、最大38mの大津波が襲った。死者2万人以上、流失家屋9千戸の被害が出た。その後三陸海岸に沿う各所の山腹に津波の記念碑が建立された。碑は津波の到達点に建てられており、「これより下(海側)に家を建てるな」と書いてある。しかし現在、人々の暮らす家はほとんどが、当然のようにこの碑より下に建っている。38メートルの津波が来たら、走って高台に逃げた者だけが助かる。このままではいずれまた津波による大被害の失敗を繰り返す、というのが結論だった。
この話を聞いて、歯ブラシ道場の主宰者として考え込んでしまった。人間というものは、これほど楽天的にできている。命に関わる津波の予防すらも怠る。まして歯周病の予防など見向きもしないのではないか。

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2008年9月11日 (木)

第61:「歯科の実力」

 「歯科の実力」(読売新聞社20年7月8日発行)を読んだ。(以下本書という)
 歯科医をどんな基準で選んだらよいのか多数の人が悩んでいる現状に、一つの判断基準を示してくれた好書だ。歯科医選びは、患者にとっては一種の賭けになっている。このような状況で本書は、歯に悩みを持つ人にに大きなヒントを与えてくれていると思う。
 私は「歯周病が治る歯ブラシ法」の中で、歯ブラシで歯周病と戦おうと思ったら、よい歯科医を探せと力説した。歯科医の選択についても触れた。数を当たれ、必ずや「抜かないで治そう」と言ってくれる先生は居ると書いた。とは言うものの実際どんな具体的な基準で、という疑問が読者から寄せられる。こんなとき本書を見た。「歯周病の専門医」というのが重要なキーワード。歯科医は歯科医でも歯周病専門の歯科医という意味。これだけでかなり選択を絞れると思う。歯科医といってもいろいろな専門がある、ことを先ずは理解できた。
 また、本書114ページの、読売新聞の記事は「歯周病が治る歯ブラシ法」でも要約して引用させてもらった重要な記事だ。歯周病は治らないと思っている人が多いこと、それは誤解で治る可能性は十分あるのだということを明確に知らせてくれる記事だからだ。かような事例はゴマンとあるはずで、掘り起こして、可能なら病院名も実名で、記事にして欲しいと思う。「びっくり事例集」と言う啓蒙書となると思う。マスコミの力に期待したい。
 しかしながら、本書のリストに掲げられた歯周病専門医はあまりにも数が少ない。本書の中の説明にもあるとおり6万7千の内の2千なのだ。私の主治医は「歯ブラシで歯周病と戦おう」と言って、成果を上げている。病院が小さいせいか、本書には掲載されていない。国民の7割から8割は歯周病といわれているが、このニーズにこたえるには、もっと詳しい、「抜かずに治すことを基本方針としている歯科医のリスト」が必要だ。これを作るのは私などの個人の力では到底及ばない。本書の続編に大いに期待したい。
 最近の歯科医学の状況についても勉強させてもらった。一番の収穫は歯科が、ここまで専門分化しているのを知ったこと及び最近注目の3mixpm法も含めた最新技術の状況を知ったこと。よくあることだが、診察は同じでも処方が180度異なる理由のひとつが分かったような気する。
 とまれ、歯で悩む人是非ご一読を。

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2008年8月30日 (土)

第57:「わかさ10月号」わかさ出版

健康雑誌「わかさ10月号」を見た。今回のわかさの特集の基本的なテーマは、いろいろな歯磨きの方法を紹介するだろう。自分に合う方法があるかもしれないのでご一読を勧める。

ビタミンCを直接歯茎に塗布する方法、ササのエキスの歯磨き剤、重曹による歯磨き、フッ素効果を利用した歯磨き。自分の指によるマッサージ、更に多くのページを割いて、最近注目の3MixMS法と言う治療法も紹介している。医学的な知識の無い人にも分かりやすく読める。
ただし、いずれの方法も、正しい歯ブラシができていることが大前提となっている。正しい歯ブラシで、口の中をきれいにしてからやれと書いてある。いきなりやっても効果は少ないだろうと思う。
ビタミンCは服用して胃から吸収するものだが、これを直接歯茎に塗布するという。誰の発想なのだろう、実にユニークだ。ビタミンCは歯茎のコラーゲンを破壊する酵素を除去する効果と、活性酸素を除去する効果があるらしい。この効果で歯茎が再生するという。

重曹には洗浄効果のあることは知られているが、歯でも驚くほどの効果があるという。私は歯の汚れを取るためにはタバコ用の歯磨き剤がよいと書いたが、比べてみたい。ということでビタミンC重曹の2つについては試して、結果をこのブログで公開できればと考えている。

フッ素についてはこのブログの記事、第20と第25と第34で書いたので参照してほしい。ブログ記事を書いた時の私の疑問に対する回答を今回のわかさで見つけた。フッ素入りは磨き剤で磨いた後はやはりきれいに洗い流さない方がよいという見解があったのだ。
ササのエキスについては知らなかったが、このブログ第20に関連記事があるので参照して欲しい。

マキノ出版に「安心」という健康雑誌があるが、昨年2007年11月号に私の歯ブラシ法の記事が掲載された。健康雑誌には時々、歯の問題が特集される。歯は重要で読者の関心が高いからだと思う。

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